商圏分析とは?
こんにちは、r.itoです。みなさんは商圏分析という言葉をご存じでしょうか?
商圏とは、「自社の製品に対して集客が見込める範囲」のことであり、「商圏を地理的条件や顧客情報などを用いて分析すること」が商圏分析です。
誰でも簡単に情報が入手できるようになった近年では、店舗経営において商圏分析は必須と言っても過言ではありません。
自店舗の商圏内を正確に把握し、自社製品を効果的に販売する方法を考える商圏分析は、いわば店舗間の情報戦なのです。
商圏分析では、自店舗の製品特性を理解したうえで、商圏内顧客のニーズと合っているのか、どのようにプロモーションをすれば来店・購入してもらえるのかを分析することができます。
このように、商圏内の情報を分析し、販売方法を最適化することで最終的に「利益を上げること」が商圏分析の目的です。
この記事では商圏分析の意味に加えて、商圏分析のメリットと分析すべき対象、分析方法を紹介していきます。
商圏分析のメリット
先ほども説明したように商圏分析の目的は利益を上げることです。そのため、商圏分析のメリットはいわずもがな利益の向上です。
では、なぜ商圏分析が利益向上につながるのでしょうか?
顧客に合わせた商品提供!
商圏分析をすれば顧客属性が把握できます。
顧客属性とは「性別や年齢、年収といった顧客が持つ情報」のことで、顧客属性に合わせた商品を販売することで売り上げを伸ばすことが可能です。
また、顧客属性から商圏内顧客の好みに合わない商品を減らすことで在庫を減らし、余分なコストを抑えることにもつながります。
コンビニを例に考えると、商圏分析によって付近に喫煙者が多いと判明した店舗では、甘いお菓子やドリンクよりも、喫煙グッズや合わせえて購入されやすいお酒やおつまみなどを充実させることで売り上げを伸ばすことができそうです。
出店候補地の検討!
出店前に商圏分析を行い、自社製品と相性のいい地域へ狙って出店することで退店のリスクを軽減し、スムーズに売り上げを伸ばすことができます。自社ブランドを確立していて「コンビニのように商圏に合わせて製品や商品棚を変えるのが難しい…」といった場合では、出店前に自製品の内容や価格と顧客のニーズが合致しているか調べることで「商品自体に価値があるのに売り上げが伸びない」という事態を防ぎやすくなります。
美味しいうどんが安価で食べられる有名全国チェーンの「丸亀製麺」はうどんの本場である香川県に出店したものの約3年で閉店となってしまった過去があります。
この原因は丸亀製麺の品質ではなく、香川発祥でないのに丸亀を名乗ることへの反感や麺やダシへ強いこだわりを持つ「本場」のニーズと一致していなかった、などの顧客要因やより安価で美味しい個人うどん店が多数あるという競合要因にあると考えられます。
商圏分析による事前調査は、このような退店のリスクを軽減することにつながります。出店には大きなコストがかかるため、事前に退店リスクを減らすことは非常に重要です。
また、商圏分析では顧客情報だけでなく競合情報も分析するため、出店した際の売り上げ予測や、いかに競合の顧客を奪うか、顧客を奪い合わないかといった対策もできます。
効果的なプロモーション!
商圏分析によって「消費者の購買行動を促進させる」プロモーションを最適化することで、売り上げをさらに上げることができます。
高齢者であればチラシや張り紙、若者向けならばオンラインでの広告や割引が使いやすいなど、地域や顧客によって効果的な宣伝方法は異なります。
商圏分析の結果に合わせたプロモーションを行うことで、効果的な集客が見込めるだけでなく、広告費を減らすこともできます。広告には非常に大きなコストがかかるため、チラシを近くの家や歩行者にやみくもに配るというのはあまり効果的ではなく、事前の商圏分析により効果的な集客を行うことが可能です。
3つの分析対象!
これまでの内容で商圏分析がどのように利益向上へつながるかを分かってもらったと思います。ここからは、実際に何をどのように分析すればいいのか、分析対象を「顧客」「地理的特性」「競合」の3つに分けて、分析方法について紹介していきます!
顧客の分析!
商圏分析でます行うのは、顧客の分析です。商圏内にどんな顧客がいるのか、どのように来店し、購入してもらうのか考える必要があります。
顧客属性の把握
顧客の分析でまず行うべきなのは、顧客属性の把握です。
住宅地に近い店舗であれば、付近に住む人々の顧客属性を調査することで、潜在顧客の情報を把握することができます。
総務省統計局が整備している政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)を利用すれば、エリアごとの世代別人口や世帯年収分布などの日本の統計データが無料で入手できます。
また、付近の居住者と店舗への来店者が一致しない場合も当然存在します。繁華街や観光地などの人々が他方から集まる場所に店舗がある場合は、携帯電話と連携したGPSデータを購入することで、より現実的な来訪者の情報を把握することができます。
GPSデータには性別や年齢以外に居住地などの付加情報もあるため、来訪者の所得等を推定することも可能です。このように、同じ顧客属性でも商圏の環境に合わせて用いるデータを変えることが重要です。
トレンドの把握
顧客属性が判明したら、トレンドを把握しましょう。
分かりやすい例でいえばインスタ映えやタピオカブームなどがトレンドですが、新型コロナウイルスへの対策や安全性などの顧客の関心が高まっているものもトレンドの1つです。
トレンドは予期せぬところから急にやってくるため、顧客が何を求めているのか、常に目を光らせておくことで、他店よりも早く手を打つことができます。
地理的特性の分析!
オンラインビジネスの場合は不要ですが、店舗マーケティングであれば周辺の地理的情報は売り上げに大きな影響を与えます。
道路状況の把握
まずは道路情報です。
店舗付近の道路について、交通量の多さや時間・曜日による変動を調査することは非常に重要です。
車通りが多ければ駐車場の設置や入りやすさの追求、遠くからでも分かる看板・外装づくりや道路混雑時の人による宣伝など、車客に対する集客に費用をかけることは合理的ですし、車客を取り込むことで大きなリターンが見込めます。
また、歩行者の比率が高ければどの通りが賑わっているのかを調査することで、自店舗への動線を意識したマーケティングを行うことができます。賑わいの原因は駅からの1本道だからなのか、大型デパートへ行く道なのか、道自体に魅力があるのか、といった歩行者が何をターゲットにしているのかを意識することも、マーケティングに生かせるかもしれません。
駅情報の把握
駅チカや駅中に店舗を持つ方々は、「駅には人がたくさん来るからウチは商品力だけ高めればいい」などと集客にあぐらをかいていないでしょうか?
もちろん駅付近では来訪者は多いですが、駅の利用者は何かしらの目的地へ行くために駅を利用するため、人々を振り向かせるようなプロモーションが必要です。
駅チカの店舗であれば最寄り駅の利用者数を時間帯や曜日別で確認したり、降車する人々は何駅からきているのかを分析することで、より来訪者に合わせた商品を提供することができます。
人通りが多くても売り上げが伸びない店は多くあります。製品の品質を高めるだけでなく、いかに認知してもらうかも非常に重要であり、商圏分析によって達成しやすくなります。
商圏バリアの把握
山や川、線路といった「顧客の来店を妨げるもの」を商圏バリアと呼びます。
商圏と聞いた際に多くの方は円形をイメージされるかと思いますが、この商圏バリアは円形の商圏をゆがめる原因となり、雨や雪などによる心理的要因も商圏バリアに含まれます。
商圏バリアは名前とその定義通り来店の妨げになるため、マイナスな印象を抱きやすいと思います。
しかし、障害物があり人々の動きが制限されるということは、その分動きが読みやすいということになります。大きな川があれば人々は橋を利用するでしょうし、山を越えるにはほとんどの場合が1本道です。
場合によっては商圏バリアを利用することでプロモーションの最適化など、プラスの効果が得られるということも覚えておきましょう!
商圏バリアの有無に関しては、データだけ見ていても分からず、現場での調査で判明することが多いです。積極的に現場へ足を運び、顧客目線で調査を行いましょう!
競合の分析!
最後は競合情報を分析しましょう。競合とは、「同じマーケット内で顧客を取り合う相手のこと」です。そのため、競合に何かしらの点で勝っていなければ商圏内の顧客はすべて奪われてしまいます。
立地・出店の把握
まずはどの店舗が競合になるのかを判断する必要があります。同業種でなくとも、価格帯や特徴によっては競合になりえるため、このプロセスをおろそかにしてはいけません。
競合の判別ができたら、競合がどこに出店しているのかを自店舗との位置関係、周囲の交通量や施設内容といった観点から調査することで、その競合がどれだけ脅威になりうるのかを分析することができます。
AlteryxというETLツールを使えば、膨大なデータを簡単に分析することが可能です。
Alteryxでは、プログラミングのようなコードが不要でツールを繋ぐだけで簡単に処理が実行できます。視覚的に分かりやすいだけでなく、データを差し替えればワークフローを組みなおすことなく更新可能です。以下はAlteryxにより競合の位置や数を分析したものです。
Alteryxでは、上図のような簡単なフローを組むだけで、Excelなどではできない空間的な分析を行うことが可能です。上図から、6号店の半径5km以内には1109号店や204号店などの競合がいることが分かります。さらに、1つツールを付け加えるだけで、以下のように定量的に競合数を把握することも可能です。
先に見た6号店の半径5km以内には、7店の競合がいることが確認できました。Alteryxでは、上図左のように、ツールの動作内容が文字で分かるため、プログラミングのようにコードを理解しなくとも、簡単に高度な分析が行えるうえ、膨大なデータでも高速で処理が可能です。
Alteryxを用いた商圏分析に関しては、以下の記事で詳しく書いていますのでそちらもご参照ください!
エリアマーケティングとは?実践的な手法も紹介!
現場調査による把握
しかし、データから分かる情報には限界があります。影響度が高い競合やにぎわっている競合店であれば、消費者目線で競合店へ入ることも有効です。
自店舗と比べて何が良い・悪いのかを調査し、盗める技術は盗むべきです。しかし、なんでもかんでも真似をしていては自店舗の魅力もなくなってしまいます。自店のコンセプトを崩さないように、どこで競合と差別化し勝負するのかをはっきりさせることが大切です。
終わりに
以上、商圏分析とは何か、メリットと分析の対象・方法をいくつか紹介致しました。商圏分析では様々な観点からデータを分析すること、そして実際に現場へ足を運び自分の目で観察することの両方が非常に大切です。
商圏分析や店舗経営は答えのない課題であるため、思いついたら実践してみることも利益アップへの近道かもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました!