BIコンサルタントが読み解くデータマネジメントデザイン ~0を1にする前向きな第一歩~

BIコンサルタントが読み解くデータマネジメントデザイン ~0を1にする前向きな第一歩~ | Tableau-id Press -タブロイド-
前向きデータマネジメント

truestarアドベントカレンダー2022 13日目は書評にしたいと思います。truestar shotamaです。

弊社truestarには福利厚生の一環として年間最大24万円の「教育支援給付金」が用意されています。これにより、インプット・アウトプットの価値向上を図るとともに、業界内外のトレンドを追いかけ続ける姿勢を文化として醸成しています。

この記事では僕が今年買った書籍の中から
1冊目『実戦的データ基盤への処方箋』
https://gihyo.jp/book/2021/978-4-297-12445-8

2冊目『行動を変えるデザイン』
https://designing-for-behavior-change.jp/

を読んで考えたこと、そして未来に期待するワクワクなどをつらつらと書いてみたいと思います。

■1冊目の紹介

1冊目はカバーそでに書かれた

「なぜ御社のデータ基盤は活用されないのか」

という一文の通り、データ活用にはデータ基盤が必要で、そのデータ基盤を運用していくためには3つの要素(データ・システム・ヒト)が必要、ということで要素ごとに全3章で構成されています。

■なぜデータマネジメントが必要になるのか 分解してみる

データマネジメントは目的ではなく、「データを活用した意思決定」が第一に必要で、その手段として考えられることが多いと思います。(DX(デジタルトランスフォーム)も同様)
読み進め、そのデータマネジメントに求められる機能を掘り下げると、以下の3つになるのではないかと考えました。

  1. 今ある情報をもれなく集め、データとしてアクセスできるようにする(1を1として認識できるようにする)
  2. 今あるデータを組み合わせ、新しい示唆を得る(1から2、5から10を得られるようにする)
  3. 上記の機能が常に発揮されるよう、持続可能な管理体制を作る(1なら1、10なら10を、×365日活用可能な状態にする)

データマネジメントに言及しようとすると、テクニカルなテーマはどうしても避けられないので、非エンジニアの方は敬遠してしまうかもしれません。
しかし目的に立ち返ってみると「データマネジメント」が必要な全員にすべての機能が同時に必要になるわけではなく、今の自分(たち)にとって優先度の高いものをフラットに見極め、一つずつ取捨選択しながら実装していくのが現実だと思います。
そういった視点から見ても、本書の3部構成はある意味つまみ食い(つまみ読み?)がしやすい親切設計だと思いました。

■学びとここから考えられる課題

各章の中でも一番自由度が高い「ヒト」の運用に今回は焦点を当てたいと思います。
ヒトについて触れた「第3章 データ基盤を支える組織」では次のようなことが書かれております。

・データ活用と表裏一体の関係にあるセキュリティ面のリスクやそれについての備え・対策
・データ活用/セキュリティを正しく運用するために自分のいる組織の現状(As-Is)を把握
・それぞれの現状に相応しいデータマネジメント体制を構築する(体制づくりに際して必要な文化・組織構造・人材をはじめとした各要素にも言及)

データマネジメントの必要性が出てくるのは、外発的な動機(お上からの指示など)、内発的な動機(個人として抱える課題など)それぞれあるはずですが、そのいずれも通るべき道を予め整理されていて、とてもありがたいですね。
本書の想定読者とされているIT部門やITベンチャーの人にとっては非常に勇気づけられる道しるべになると思います。

ひるがえって、上記を進める上で考えられる課題については以下のようなものが考えられます。

・予算の都合上、高価なシステム導入が難しい(中小企業で多いと推察)
・やりたい気持ちはあるが、失敗したらと思うと動けない心理的ハードル
・自分は十分に価値を理解していても、他の人にデータマネジメントの必要性を気づかせるのが難しい
・CDOやデータガバナンスチームが未設置で人材が不足している

参考として、CDOを役職として設置している大企業の割合(2022年時点)は1割に満たないようです。いわんや中小企業をや、ですね。
https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/2005/14/news130.html

先に書いたデータマネジメントの必要性については、企業の規模を問わないはずですが、実際に最初の一歩を動き出そうとして初めてつまずくポイントが認識されるのもあるあるだと思います。
まさにそんな個々の課題を解決するためにヒントとして本書が存在していたり、様々なデータ管理サービスが存在していたり、導いてくれる存在は着実に増えてくれているのも事実です。

しかし中には課題をかかえつつもそういった助け船にリーチ出来ない人も多いのはないでしょうか。そういった方々は往々にして知識が足りない場合が多いかと思いますが、それではまず座学からお願いします、というのも、全員がやらないといけない道でもないような気がします。かといって、価値がわからないまま盲目的にデータレイク・データマートを作って満足してもらうのも本質とズレる気がします。

そういった存在も包含しつつ、データマネジメントの民主化を考えることは意味があるのではないでしょうか。

■業界の活性化に向けて今後やってみたいこと ~データマネジメント世界への”ドアノブ”の実装~

ところで話は変わるのですが「アフォーダンス」という考えをご存じでしょうか。
https://sevendex.com/post/6841/

一言でいうと「人をある行為に誘導するためのヒント」と呼ばれるものです。

例えば上記のようなドアノブがあった時に、引き戸のような開け方(横にスライド)をする人はいないですよね?大多数の人は、教えられなくとも、ドアノブを持って引くのではないでしょうか。
このように説明不要なデザインの実装が、ここでいうアフォーダンスだと思って頂ければと思います。

なぜ急にこのような話を持ち出したかというと、データマネジメントに置いてもこのような「ドアノブ」にあたるものが実装できないか、と思ったからです。

テーマとしてとりあげられることが増えてきたものの、まだまだデータマネジメントは難しいもので、掴みどころのない抽象的なものというイメージがあるので、もう少し解像度を上げて身近な存在にまで降ろせないかなあというのが正直なところです。わかる人にはわかる、という意味では芸術に似た側面もあるかもしれません。
データ活用について困った人が、まずは藁にもすがるつもりで手を伸ばしたところに「つかめるなにか」があること、方向性としてはこちらで合っているよと導いてくれること、そのような安心感・安定感を提供できる共通認識のようなものを作っていく手助けが、この業界に現在身を置くものとして出来ないかと思ったりします。
それは、ツールなのか、アプリなのか、フレームワークなのか、キーワードなのか、思考法なのか型なのか、様々な形があり得るかと思います。

すでにそのアプローチの一つとして様々なツールが開発されているかとも思います。
例えばデータビジュアライゼーションに関してはTableau、データ加工についてはAlteryxなどがあるかと思いますが、データマネジメントの文脈に置いても、一足飛びでその価値を直接伝えるよりまず、一歩を踏みだした時、ドアノブにあたる持ち手部分をさっと差し示せると、知るより先にエッセンスとしての価値を体感して貰えて、スムーズな変化につながるのではないでしょうか。
(※もちろん、提供する側はその価値について、熟知している必要はあると思います。逆にいうと、ユーザー側にはまずその利便性を先に提供するだけでも問題ないのでは、というのが今の僕の考えです)

■まとめ

言うは易しで、なんだか抽象的な話で終わってしまいましたが、具体的に効果的と思われるアプローチやその可能性、業界調査でわかることについては、後日、2冊目の本を読んで思ったこととも交えながら、書いてみたいと思います。
個人的にはまだまだ伸びしろのあるデータマネジメントという分野へのワクワク感や期待を思って書いていたというのが一番です。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。